藤井碧峰
1990年2月富山県砺波市生まれ。平成生まれの若手書道家として、古典臨書に基づく正統派の書が持つ本物の字の良さを追求しながら、現代的で、誰よりも敷居の低い、身近な書道家を目指して活動しております。第七回比田井天来・小琴顕彰佐久全国臨書展 天来賞受賞。令和元年、日本三霊山 立山山頂 雄山神社峰本社に看板奉納。
INFORMATION
以前「トリビアに出た秘密兵器墨磨り機!」で、ご紹介させて頂きました墨磨り機ですが、購入して以来大活躍でございます。
どうしても固形墨というと磨るのが面倒だと言うイメージがあるのですが、本当に固形墨の良さが分かる書道愛好家の方にはそれでも手にしたいものです。
例えば5丁ほどの固形墨で漢字の半紙練習するほどの墨を得ようとすると1時間くらいは必要です。
また硯によっても墨の磨れるスピードが変わりますし、大きさもある程度無いと大変です。
写真の端渓硯老坑(正しくは硯板)は小学校の頃に机の引き出しに入れていたトレーを流用していますが、硯板の大きさが25×16cmほどあり重さも相当なものです。
現在の価値でこの硯板に価格を付けたら10万円以上はすると思います。
でも昔から書道をされている先生方はやはり大きい硯を持っていらっしゃいますね。
ここ数年は墨運堂さんの「液墨」という、固形墨を液体にした商品を使用していました。
こちらは350mlで約3000円。
書道してない人が聞くとびっくりなお値段ですね笑
コーラ1本の量でこの値段ですから、どんな高い自動車用のエンジンオイルでもなかなか対抗できません。
それでも良い商品で、道具を大切にされる方からは人気のある商品で、私も愛用していました。
でも墨磨り機を買うと固形墨を磨りたくなるもので大きい固形墨を買いました。
在庫の固形墨も沢山あるので、しばらく墨使いたい放題な気分です。笑
私のように納得するまで何時間も、何十枚、何百枚も紙を使ってしまう人には、この固形墨を使うことによるコスパの良さは非常にありがたいですね。
数年前に毎日書道展に向けて作品を書いた時は、2週間で液墨を4本、50枚で14000円する紙を2反以上使用したりと、藤井碧峰が暴走的に字を書き始めた時にはとんでもないことになります。
数年前を振り返りましたが、今も課題作品やご依頼頂いた作品を書いていると同じことになります。
先日のこの仮名の作品も、4時間半で100枚近く使ったんじゃないでしょうか?
また仮名については固形墨オンリーでやってきました。
仮名だと半紙の練習に墨を磨るのに約15分ほどです。
左手でスマホを触りながら磨るとあっという間です♪
これは実際に固形墨を使って頂かないと分からないと思います。
墨の伸びが良いので運筆が軽い、というのはよく聞く話です。
実際のところ違うのですが、先ほどの「液墨」という商品でも実際に固形墨を磨った墨には適わないようで、固形墨は特に墨を濃くした時に驚きの運筆の軽さで書けます。
特に私は行草書、仮名をよく書きますので、市販の墨液とでは大きな違いを感じます。
行草書、仮名は流れ、スピードが大切なので、墨の伸びが良くサラサラしていないと
かなりのフラストレーションを感じます。
筆を洗う際にも固形墨は(液墨も)非常に洗うのが楽です。
下手すると筆を洗う時間は半分くらいになります。
筆を洗いやすい、墨が抜けやすい。
ということはサラサラしているので筆に墨が残りにくいという意味でもあります。
洗面所の汚れも、また床にこぼしてしまった墨も、案外普通に落ちてしまうのが固形墨です。
(床の素材にもよりますが)
書道を長くされていると「墨には色がある」というお話を聞かれたことがありませんか?
黒は当然、朱墨もあれば青墨、白墨、金墨、銀墨、何でもあります。
しかし黒の中にも色んな色があります。
茶色、紫、青・・・
それは正直言うとカメラの画像ではお伝えしにくいのですが、ちょっとだけ伝わる画像をお見せします。
↑墨の濃いところと薄いところがあります。
この薄いところに色が出てきやすいです。
運筆スピードが速かった箇所は紙に墨があまり乗らないので色が薄くなります。
墨の濃い箇所は滲みます。
滲んだ中にも矢印箇所のように、筆が通った箇所がうっすらと浮かび上がります。
特に「運筆スピードが速かった箇所は紙に墨があまり乗らないので色が薄くなる」という点がお伝えしたい点。
こういう潤渇の多い作品では、墨が濃く黒いところと白っぽいところが存在することで賑やかな作品となり特徴的になるのですが、これに先ほどの色が加わることで”山の紅葉のように見えます”。
(画像じゃ伝わらないのが残念)
固形墨を使用して墨の色が見えるようになったことで、芸術としてまた一つ要素が増えて、奥行きのある作品になります。
黒の中にも色んな色があることを知ると楽しいですよ♪
また最初から青墨を使うのもアリです。
こちらは黒と青の比較になるので分かりやすいですね。
爽やかな色合いです。
固形墨を使うことで色だけでなく滲みも楽しめるかもしれません!
また何よりも固形墨は筆に優しいですし、筆を育ててくれます。
私のお気に入りの筆は固形墨しか使用しないようにしていますが、それは絶対に譲れない要素ですね。
固形墨はどうしても手間が掛かってしまいますが、筆のことを考えても、作品のことを考えても、最終的にたどり着くのは固形墨なのではないかと思います。
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