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書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

 

世間では【美文字】という言葉が流行っていますが、あなたの知る美文字は本当に美文字でしょうか?

書道と美文字は切っても切り離せない存在であり、書道家からの目線で本物の美文字とは何なのかについて触れていきます。

そして本物の美文字を手に入れるための学習方法や道具について、書道家だからこそ分かるマニアックな視線より説明させて頂きます。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

 

 

 

書道家の目線で見た美文字とは?

 

美文字って憧れますよね。良い字を書けるだけで優れた人に見えたりしますし、信用に繋がったりもします。

世間では美文字という言葉が結構流行っているわけですが、長年書道家をされている方であったり、小さい頃習字教室・書道教室に通っていらっしゃった方でしたら、世間で取り沙汰されている美文字に疑問を浮かべる人も多いのではないでしょうか?

私もその一人です。

テレビ番組やインターネット、本で”美文字”を謳っている美文字書道家や講師の人の字のほとんどが美文字では無いのです。
それもそのはずで、基本的なものを学んでいないのがあからさまだからです。

これは私が書道家として自分を売り込むために尖ったことを言っているわけでは無く、ある程度書道の教養を得た人でしたら同感して頂けることと存じます。

世間でよく言われる美文字の多くは俗っぽいものでありパッとしないのも事実です。
それはどことなくパソコンの書体にもあるような字に近いものを理想としているような傾向を感じるからです。  

慶弔用筆文字スタンプ印影

私が書道家として書道の良さを広めていくためにも必要だと感じているのは

”本物の美文字”

です。

 

 

そもそも美文字とは?実はあなたの見る目、感性が全て!?

 

そもそも”美文字”とは何なのでしょうか?

Weblioより「美文字」の意味を引用しますと・・・

美しい文字を意味して用いられている語。文字そのものの美しさに加えて、読みやすさや文章全体のバランスなどが重視されることも多い。

テレビ番組などで、芸能人の文字の美しさが競われたり、美文字の書き方の
講義が行われたりすることもある。

対義語は「汚文字(おもじ)」とされる。  

と出てきます。

これに付け加えまして私が世間で美文字だと言われている書の範囲を表現してみますと、【実用書道】の範囲に入ると思います。

慶弔用筆文字スタンプ

実用書道とは言葉の通り、日常的に使われるノート書きや手紙、宛名書き、のし袋・のし紙の名前書き、卒業証書・認定証・感謝状などの賞状書き、メニュー書きなどが含まれます。
いわば暮らしの書であり、”筆耕”の人の仕事にも含まれるかもしれません。

筆耕、書道家の手書き賞状、卒業証書

それらのものを美しい字で書くのが美文字。 
この”美しい字”というのが極めて難しいところで極めて奥深いところであります。

この記事を読んでくださっている方に質問です。

『あなたの考える美人な女性はどなたでしょうか?
何人でも良いので思いつくがままにリストアップしてください。』 

さて、どんな方を想像されましたでしょうか?
中には「私が最高の美人よ!自分の顔見ているだけで白いご飯いくらでもおかわりして食べられる!!」なんて回答をされた方もいらっしゃると思います。

奈良東大寺の鹿

そのイメージされた美女はそれぞれに違うはずです。
(藤井の好みは放っておいてください) 

つまりはそれぞれに美しいと感じる【感性】のようなものは違っているため、美人という土俵にリストアップされる女性のイメージも変わってくるのです。

「自分の顔見ていて具合が悪くなる」っていう方もいらっしゃると思います。
でも誰かが「美人だ」と言ってくれれば、あなたも美人の土俵に立ったことになります。 

また私の友人には何人か”美人ってどんな人を指すのか分からない”という人もいます。
これは説明に困るところではありますよね。 

では今度は

『美しい景色だと感じる場所、また思い出の瞬間を思い出してください』

と聞かれたとします。
あなたは何と答えるでしょうか?

わたくし藤井碧峰につきましては、2018年4月に山口県下関市の火の山公園で見た関門海峡の景色や、夕焼けに染まる瀬戸内海を見たのが極めて美しく印象に残っております。

火の山公園 

また愛する富山県の立山におきましても多くの美しい景色、いわゆる絶景というものを目にしてきました。

立山登山 絶景 

澄んだ海の青さに魅力を感じる人もいれば、祭りの華やかな光景を浮かべる人もいると思います。  

となみ夜高行燈 広報となみ7月号に掲載 

一方で、景色に何も感じないという方もいらっしゃると思います。 
海を見ても、山を見ても何も感じない、そういう人も何人も出会ってきました。 

結局何を言いたいかと言いますと、”美しい”という感性を持っている人もいれば持っていない人もいます。
美しいという感性を持っていたとしても、それぞれに育ってきた環境も違うため、美しいと感じる対象も大きく変わってきます。

そのため結論として言えることは、美文字と言うのはあなたの見る目、感性が全てです。

小さい頃から良い字を沢山見ていれば自然とそれに伴った見る目を養ってきているはずですし、汚文字ばかり触れてきた人はメディアや肩書きの有無に心を動かされているだけの場合もあると言えます。 

書道教室選びの場合でも同じですし、独学で美文字を学ばれたいとされる方においても

【何を美しいと感じるか?】

それ次第で辿り着くレベルも大きく変わってくるのです。

立山登山 絶景

こういう点で書道家という職業を考えた時、書道家とは自分の感性をある程度信じて勝負していくような仕事なのかもしれませんね。

 

 

書道家藤井碧峰の考える本物の美文字

 

【書道家藤井碧峰の考える本物の美文字】という書き方は大げさですが、書道家として一般の方々へ届ける商品を多く企画・販売しているなかで大切だと感じていることは、一般の方でも書道業界のどんな流派、会派に属している人であっても、素直に良いなと感じて頂けるような字を書けることであります。

香積廣野神社御朱印はんこ

そのような字を演じるためには様々な要素があるわけですが、私が常々感じる、美文字を構成する要素は、

・確かなる結体、造形性 
・澄んだ線、絶妙な強弱をつけた線で書かれた字 
・雰囲気のある字、俗っぽくない字、温かみのある字(人間味を感じさせる字) 
・平面的ではない 
・書道オタク的な字に見えない 

といったところでしょか。   


初心者の方におすすめしたい美文字の捉え方は、【確かなる結体、造形性】を身に付けることです。
難しいことを書いていますが、要は”カッコいい字形”のことです。

まずはパソコンで出力できる字をご覧いただきたいです。

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1番目は「游明朝体」で、2番目は「正楷書体」です。

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最後は、書道家なら誰でも知っている”楷書の極則”と言われる欧陽詢の「九成宮醴泉銘」の字です。

白黒反転しているのは拓本と呼ばれる形式であるためで、昔中国で書かれた石碑の字を写し取っているためこのような雰囲気になります。 

見にくい、という方のために白黒反転した画像にて3つを比較してみます。

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こうやって見てみると明らかに九成宮醴泉銘の字がカッコよく見えます。
その理由の一つが字形です。

活字の文字と手書きした文字の違いは字形にあり、活字の多くは四角いマス目に収まるようにしてデザインされていることがほとんどです。
これによってどんな画数の字であっても整然と並べやすいというメリットがあります。

その代わりどこを見ても同じで、味気無さは超一流です。
極めて機械的な字だと言えるでしょう。

一方で手書きした文字の場合は「固」という字のように四角に近いものでありながら若干縦長で、完全に正方形になるものはありません。

他にも横長、ひし形、三角形、逆三角形、台形、丸型に収まるものなど、形は様々です。

また文字の左側の「偏(へん)」と右側の「旁(つくり)」、文字の上部にある「冠」と下部の「脚」の大小のバランスなどによって、字は魅力的に見せかけることができるようになります。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

「固」若干のことで左右完全対称の字形にならないように工夫されている。

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「下」「千」縦線が伸びやかである。”千”の横線の位置はちょうど真ん中にきていないのでこう見える。 

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「上」極めて横方向に長くとっている字形。

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「郡」右側が伸びやかに書かれている。

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「雲」”雨”が大きく、下の”云”を小さめに書いている。

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「動」”重”に対して”力”を結構小さめに書いている。

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「若」くさかんむりを小さくしているが、”右”の横線を思い切り長く書くことで伸びやかさを出し、”口”を小さくすることでそれをさらに良く見せている。

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「来」左右対称の字ではあるが、微妙に左右に出ている横線の長さが違っていたり、斜めの左払い、右払いの線の角度が違う。

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「神」”ネ”に対して”申”の縦の長さが極めて長い。

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「九」右方向への伸びやかさ。

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「始」”女”の斜め具合の絶妙なバランス。

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「成」一本の細長くも強靭な線で絶妙なバランスを取っている。

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「人」1画目、2画目の角度の違いと、右方向への伸びやかさ。

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「冠」主要な部品はかんむりの中に収まっているが、足が極めて伸びやかである。

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「尋」”ヨ””エ””ロ”と”寸”の大きさのバランス。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

「極」”又”の伸びやかさと、最後の”一”の絶妙な位置。

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「風」縦方向に伸びるかぜがまえの軽やかさと、”虫”の絶妙な位置。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

「之」下方向への広がり方。

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「微」ぎょうにんべんと”攵”の小ささ。

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「武」斜めの線の伸びやかさ。

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「越」実は縦方向への伸びやかさもある。

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「其」上部の強調と下部のさり気ない点の書き方。

などなど・・・。
伝わりにくい点が沢山あったことと思います。

要は一字一字における伸びやかに書きたい線を大切にしたり、左右対称の字の場合には微妙に左右差を作ったりすることが良い字形づくりにおいて重要であると言えます。  


【澄んだ線、絶妙な強弱をつけた線で書かれた字】について。

書道家 藤井碧峰作品集

”澄んだ線”というのはある意味では”冴えた線”と呼んでも良いと思います。
何の屈託もない線で書かれていること。
これは説明すると極めて難しいですね。

次に”絶妙な強弱をつけた線で書かれた字”についてですが、「四」の字のように、何気なく書いてしまうと味気なくなりそうな字において、絶妙な太細いの強弱をつけた線を取り入れることです。

この際に、ペン字(ボールペン等)書道をされている方からすると
『では筆ペンや筆を使った字じゃないと駄目なんでしょうか?』
という疑問が出てくるかもしれません。

実はこの場合も同じです。

驚かれることも多いですが、あの硬いペンの先も確かなスピード感、リズム感と、確かなペンのタッチによって強弱を表現できるようになります。

そのためには若干太めのペンを選ぶことを推奨します。
(0.7mm~1.0mm程度のジェルインキタイプ)

太いペンではゆっくりかいていると単純に太い線になってしまうのですが、スピード感があれば細い線も書けるようになります。

鉛筆、シャープペンシルにつきましても同じことが言えます。
よく硬筆入門では鉛筆を使用した練習をするのですが、この時推奨したいのがBまたは2Bの鉛筆です。
それほど費用も掛からない道具ですので色々試されてみると良いと思います。  


【雰囲気のある字、俗っぽくない字、温かみのある字】というのは、その書から醸し出されるオーラがあることであり、何か違う特別感を醸し出すこともそうですし、何よりも手書きであるメリットが現れていなければいけません。

書道家 藤井碧峰作品集 

「筆ペンを使えば活字よりは良いものになるだろう」という安易な考えは災いとなります。
それっぽく書いているだけの字でしたら先ほどのパソコンの書体の方が安定していて可読性にも優れます。

温かみのある字は線の太さを必要とするため、筆ペン・筆を必要とします。
線の太さを出すことはもちろんですが、細さを出すのも技術です。 

長年書道をやっていて感じるのは、字を書く上でこれが一番難しいのでしょうね。
ある程度バランスの取れた太細いの強弱の出し方をしないと読みにくいものになってしまいます。
また、文の字数が多い時には細い線を上手に出していかないと見る側が辛くなります。   


【平面的ではない】というのもこ先述の内容に繋がりますが、線の強弱や伸びやかさによって構成されるものです。

藤井碧峰書作展@北陸銀行砺波支店|富山県の書道家藤井碧峰

これは実際のところ書道家だからできるというものでもなく、結構高度な技術で立体的な書というのは、書の見方から始まり手の動かし方にまで関わってくる問題であります。

立体的な書というのは見る者の目を引くようなものです。
それはオーラという表現も合います。
力強く書くから出るというものでもなく、静かな書であっても確かなものであれば立体的に見えるものです。   


【書道オタク的な字に見えない】ということは、ある意味俗にはならないのかもしれませんが、勘違いしてしまうと
『君たちには到底理解できないかもしれないかもしれないが、私は凄いものを書いているんだぞ』
という、理解されない書になってしまいます。

これでは多くの人に認められる美文字になるどころか、残念な勘違い野郎書道家で終わってしまいます。
現代ではネットの活用により様々なタイプの書道家が日本や世界で活躍されています。

メディアのみならず、ホームページやSNSの活用によって様々な発信をしていくことができている中で、逆に受け取り手もその書道家が本物なのかどうかを見極める必要が出てきてはいる状態です。

書道オタク的な字もそうですし、勘違いしている人の字を「たぶん良い字なんだろう」と受け止めないで、純粋に美しいと感じられる字の人の字を”美文字”と捉えて、目標をもって学んでいくことが大切でしょう。

 

 

 

 

 

誰でも簡単に始められる!書道家が知る、美文字に近づくためのちょっとした心遣い

 

【本物の美文字】という内容で一度お伝えさせて頂きましたが、実際にはそこまでしなくてもそれなりに美しく見せる技があります。

さてそれはどうすれば良いのでしょうか?

まずは字を書く時に、
・意識すること 
・ちょっとした手間を掛けること 
で大きく字の印象は変わってきます。

 

 

真っ直ぐ線を引き、はっきりとした字を書こう

 

字が下手だという人に多いのが、他人から見て読める字では無いということです。

会社員時代に他の社員が作った資料を読もうとしたときに、アラビア語のように見えるものもありました。

特に字が苦手な人の字はぐちゃぐちゃになっているので、FAXで送られてきた場合には更に字が潰れて読めなくなるのです。

ここで大切なのが真っ直ぐな線を引くことです。
そして窓の有る字(「田」のような字の内部の四角い部分)をちゃんと見せることです。

まずはどんな字でも”四角く書くこと”を意識することで各段に読み易い字になります。
極端なことを言うと、最初は曲線を意識せずに直線だけで構成するくらいの勢いで良いです。

参考として「澤田里枝」さんを書いてみました。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

右側の澤田さんは窓のある字の箇所が潰れているため、多少の想像力が無ければ読みにくいことと思います。

中央は単純に真っ直ぐ線を書いて整えたもの。
左は筆ペンで楷書で書いたもの。楷書の場合には空間を意識することで、ペン字であろうと筆ペンであろうと可読性が上がります。

小さい頃、鉛筆やシャーペンで書いていてよく芯が折れた人はいませんか?

その方は特に要注意です。
筆圧が強いから折れている可能性が高いからです。
(他の生徒からすると、授業中やテスト中に”カツカツ”と書く音が賑やかな人に見えています笑)

筆圧が強い人はペン先、筆先が潰れがちで太い線になりがちなので特に空間が無くなりがちです。

行書や隷書等ではあえて潰すこともありますが、計算して潰さないと品が落ちるだけなので基本的には明るい字を書くことを意識しましょう

 

 

真っ直ぐ列を整えよう、字の大きさに気を付けよう

 

実用書道では一字ではなく、字数のある文章を書くことが多いと思います。

例えばのし紙、のし袋に自分の名前を書く時にも同じことが言えますが、真っ直ぐ列を整えて字を書くことが大切です。

まずは藤井碧峰という字を見てみましょう。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

特に行書は難しいのですがセンター(中心)がどこにあるかを考えておかないと不自然に見えてきます。

特にそれなりの書道を理解している人でしたら、字の中心をずらすという技術を使ったりするため、ちゃんと意識をしていないと酔っ払いの書道家が書いた字のように見えてしまいます。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

こちらの画像の左の文もそうですが、どこかに流れて消えて行ってしまいそうな印象を受けてしまいます。 

また書道教室でも多く見かけるパターンで初心者の方に多いのですが、右上がりの字を書く人がいます。(中央の文)
これも何か肩肘を張ったような雰囲気があって落ち着きません。
これは横線を極力平行に持っていくことで直せます。
(相当な意識と練習が必要かもしれませんが)

加えて右の文ですが、字の大小が極端で、世にも奇妙な話の類でタイトルのロゴに使われそうな雰囲気のアンバランス具合は綺麗に見えません。

実用書道の場合の多くは、<漢字を大きく、平仮名を小さく>と意識することでバランスがとりやすくなると思います。  

筆ペンで美しく退職願・退職届を書こう決定版

こちらに以前投稿した退職届の画像があります。
長い文章ではありますが、中心がずれていないのを確認していただけるでしょうか?
これが整然とした美しさを醸し出しています。

この退職届は書く前に字を書く位置に赤線を引いた紙を準備し、その上から書いています
ちょっとしたひと手間が仕上がりに大きな差を生みます。

筆ペンで美しく退職願・退職届を書こう決定版

この記事を読む方は多少なり「字を少しでも美しく書こう、少しでも丁寧に書こう」と意識されている方だと思います。

見た人に良い印象を与えるような書き方をするためには、まず”雑さ”を取り除くことが大切なのです。

退職届・退職願、年賀状、暑中見舞い、寒中見舞い、手紙、のし紙・のし袋の表書き、宛名書き、履歴書、メニュー表・・・、どこにでも筆文字の活躍の場はあります。

どこで何を任されたとしても、何点か大切なことを意識することで、いつもよりは美文字になれますので覚えておいて頂きたいことです。

書道家おすすめのオーダーメイド命名書

 

 

線に強弱を付けよう

 

またしても退職届の参考的な書き方になります。

あまり綺麗に書き過ぎても・・・という意見もあるので若干の手抜きで書いております。
線に強弱があることで筆文字ならではの厚みが生まれます。

これが時に良かったり、悪かったりもします。
何事もやり過ぎは良くないということで7パターンを書いてみましたのでご覧ください。 

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

左2つはパソコンの筆文字フォントにも多いパターンですが、筆を使ったというだけのデザイン的なものです。
こうして字を太くした場合においても、基本的に明るい字を意識すると品が一気に上がります。
良い字というのは空間の活かし方、いわば余白の作り方が極めて上手です。
それは一字単位であってもそうですし、全体のなかでの余白の取り方もです。

左から3番目は小さい頃書道してました的な方ならありえなくもない字かと思います。
悪くは無いけど品はないです。

左から4番目も悪くはないけど、”職”の字が若干栄養失調気味。
一字でもこういう字があると雰囲気が悪くなります。

左から5番目はハネもハライも出来てない、単純に筆ペン使ってみました~!的な感じのだらしない書き方ですね。
書道においてよく言われるのが【トメ、ハネ、ハライ】でしょうか。
一つ一つの動作を丁寧に行うことが大切ですし、それが書道や字を学んだ人と知らない人の書いた字を見分ける箇所となりますので要注意です。 

そして右から2番目は、落ち着きのある感じで許してあげても良いかなという感じです。
私は賞状書きによくある字が好きではないのですが、全部力強く書いているので
見ていて疲れます。

多くの場合は書道家が書いているわけではないこともあるのでしょうが、一字の中にも太い細いをつけていくことで見やすくなります。
そんな理由で私のホームページも明朝体を使用しております。

そして右端が行書体です。この行書体を初心者の方は無理やり線を続けて書こうとする方が多いように感じます。 
実際のところ実用書道で使われるような行書は人の目に触れることが多いため、あまり忙しい雰囲気にしてしまうと見苦しくなります。
そのため程よく点画を省略し、楷書に近いレベルの行書体とすることをおすすめします。

私は書道家が仕事ですので、命名書や筆文字慶弔印、名刺の字、表札など、お名前を書かせて頂くことが多いのですが、激しい字は基本的に書かないようにしています。

そのなかで要点を抑えて伸びやかに書くようにしています。
ここでは私の書いた「平坂和枝」「杉井義洋」「上田広樹」という字を見て頂きましょう。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

 

 

無駄な動きを無くし、品よく書くことが美文字に繋がる

 

最近は書道経験のない方が書道家を名乗ることが多いので一般人の方も影響されがちなのではありますが、ちゃんと書道を学んできた方が見ると明らかに美文字と言えない字が美文字とされていることが多いです。

簡単に真似できるのでサンプルとして書いてみましたが、見覚えのある方もいらっしゃるかと思います。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

”ハネ”や”ハライ”を頑張り過ぎると一気に品が落ちて下品な字になります。本物の美文字というものは品があり、さり気ないものです。

もちろん本物の腕を持つ人が”ハネ”や”ハライ”を頑張ると素晴らしいものにはなりますが、余程のことが無い場合下品になります。

くれぐれも真似されないように気をつけてください。

 

 

硬いものの上で書いていませんか?下敷きには要注意!

「仁義」

我々書道をしている人間からすると【下敷き】という存在は身近なものですが、これには若干のクッション性があります。

一方で学生や事務職員が使用する下敷きはプラスチックの硬いものがほとんどだと思います。
これは裏に食い込まないことで、他のページへの被害を減らすものではあるのですが、美しい字を書く際には邪魔になることもあるので要注意。

私の場合は下敷きを使用しません。
むしろ下に紙を敷いて、若干食い込むようにしてペン字を書いています。
これにより線がコントロールしやすくなるというのもありますし、線に強弱を付けやすいというメリットがあります。

またジェットストリームというボールペンをお好きな方もいらっしゃると思いますが、下敷きを敷いた紙に書く際は相性が悪くなりますので注意。

非常に書き心地の良い滑らかなボールペンなのではありますが、滑らか過ぎて滑り過ぎてコントロールしにくくなる場合があります。

 

 

本物の美文字を手に入れるために知っておきたい古典の臨書の世界

 

常々感じていることではありますが、実用書は実用書として勉強すると浅いレベルで終わってしまうように感じます。

つまり私が言いたいのは、それでしたらパソコンの筆文字フォントの方が良いかもしれないということです。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

私が求めるものは本物の美文字です。
それは書道的なものであり、その技術の根底には古典というものがあります。

古典とは昔の中国や日本で書かれた名筆のことです。
中には紙に書かれたものもあれば石碑他に書かれたものもあります。

顔真卿の書-王羲之を超えた名筆-

それを書道を習う人たちは良き資料として真似して書くのです。
これが【臨書】で、絵の世界で言うと写生のようなものでもあり、名筆を学んでいくことで自分の技術力を上げたり、癖を取り除いていきます。

当ホームページでは何度も古典臨書学習を紹介させて頂いておりますが、こちらでも簡単に紹介させて頂きたいと思います。

 

 

楷書の極則「九成宮醴泉銘」の紹介

 

序盤でも紹介した欧陽詢の「九成宮醴泉銘」は楷書の極則と呼ばれるほどの美しい字です。
もう美文字の極みと言っても良いほどです。

私自身、この古典の素晴らしさに惚れ込んで必死で臨書し始めたのがきっかけで今書道家になっているのだろうと感じるほどです。

一部分の引用ではありますが是非ご覧ください。
(スマホのアプリにも「九成宮醴泉銘」はあります)

 書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!
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縦長の字形が多く、やや右肩上がりの字であり、伸びやかな線が目立つ、整然とした美しさをもつ楷書です。

楷書の極則と言われるほどの名品ではありますが、実際のところ非常に書くのが難しい古典の一つです。
それもそのはずで点画に全く乱れが見られず、緊張感のある書であるため、なかなか遠い存在です。

しかしこのように美しい楷書に近づくことは大きなメリットを持っています。
序盤で触れたように、日頃見たり書いたりしている字と九成宮醴泉銘の字は何が違うのか研究してみることで自分に足りないものは何なのか知ることができるはずです。  

 

古典臨書学習によって手に入れる美文字

 

先述の九成宮醴泉銘以外にも数えきれないほどの古典名品が世の中には存在します。
この中にはあなたが好きな古典もあれば、何となく苦手な古典もあるかもしれません。

その中で好きなものだけでも良いので臨書してみることをおすすめします。
(完全に書道の世界になってしまいますが・・・笑)

ここでご覧頂くのはほんの一例で、私の好きな古典と拙作ながら私の臨書作品を紹介させて頂きます。

欧陽詢「九成宮醴泉銘」
書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!
書道家 藤井碧峰作品集 
 

褚遂良「雁塔聖教序」
書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!
書道家 藤井碧峰作品集 

褚遂良「枯樹賦」
書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!
書道家 藤井碧峰作品集
 
空海「風信帖」
書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!
書道作品|富山県の書道家藤井碧峰

同じ字を何度も見真似して書いているうちに、自然とそれっぽい字になっていきます。
そうしてあなただけの美文字が手に入るはずです。

もちろん古典臨書学習に適する題材もあれば、そうではない題材もありますので、気になった方は他の投稿も是非ご覧くださいね。

 

 

どこでも使える字典!【書法字典大全】アプリの紹介

 

今や書道家の人なら結構知られているアプリがあります。
Androidのスマートフォンをご利用の方でしたら間違いないと思うのですが(以前iPhoneの方にもインストールしたかもしれません)、便利な字典アプリがあるので紹介致します。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

【書法字典大全】です。
中国で作られたアプリのようですが、なんとダウンロードを無料で行えます。

私も4年ほど使用しておりますが、会社に行ってもササっと字を調べられるし、持っている字典よりも沢山字が載っていることもあるので重宝しております。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

いつでもスマホさえあれば少しの時間で検索できるので有難い存在です。

 

 

美文字を手に入れるための練習帳、参考書籍選び

 

以前私もペン字がうまくなりたいと思った時に、大きい書店をいくつも回ったのに良い本になかなか出会えなかったことがあります。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

私の中でしっくりきた字を書いているのは、今の師匠でもある石飛博光先生の書かれた本です。
本を通してずっと何年も石飛先生の字を学ばせて頂いているおかげで見る目も、書く技術も向上しました。
石飛先生の実用書道の字は古典に由来した字で、他の実用書道の本や美文字の本を圧倒するような内容で、初めて手にしたころは心から感動したものです。

何よりも風格がありますし、品がありますし、カッコいいですし。
自分が求めてきたものはこれだったんだ、これを手に入れたいと思うくらいの字で・・・
(大袈裟ですが本当の話です笑)

なので石飛博光先生の本や字典はおすすめです。

書道家になるには?収入は?有名な書道家は凄い書道家?

次には競書雑誌をおすすめしたいです。
書道教室に通われている人以外には少しハードルの高いものとなってしまいますが、これは店頭販売されているものではないので取り寄せる必要があります。

毎月課題があり、その課題を書いていく中で上達していくのですが、市販されてる美文字の本よりかは競書雑誌にてお手本を書かれている書道家の先生の方が美しい文字を書かれていることが多いです。(競書雑誌にもよりますが)

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

 

 

美文字を手に入れるための道具選び

 

美文字を手に入れるためには道具は徹底的にこだわるべきポイントです。

鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、サインペン、万年筆、ガラスペン、筆ペン、筆・・・
様々な道具がありますが、他の人の上を行くような美文字を手に入れるなら、
若干太い線を書ける道具を選ぶと良いかもしれません。

シャープペンシルよりは鉛筆になるでしょうし、ボールペンでしたら0.5mmよりかは1.0mmのほうがおすすめです。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

また油性ボールペン(ジェットストリーム等)とジェルタイプのボールペン(サラリ等)とでは線の強弱の付けやすさが違いますし、書いた時の黒さ具合が違うため仕上がりが大きく変わってきます。

個人的にはジェルタイプをおすすめしたいですが、こちらはすぐ乾かないものが多いため書いた時に手でこすってしまうと残念なことになってしまいます。

そのためには左側の列から書いていくことで危険を回避できるので是非お試しください。

筆ペンにおきましても結構毛のタッチが変わってきますので色々お試し頂くと良いと思います。
私がずっと愛用しているのはぺんてるの墨液ぺんてる筆です。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介! 

こちらはすぐ毛が乾いてしまうというデメリットがありますが、非常に腰があるので書きやすいことに加えて、手紙等を出す際にも滲みにくいためお気に入りです。

一時期この筆ペンの細い版を求めて色々と探していましたが良い筆ペンに出会えず、結局太めの筆のほうが太い線も細い線も綺麗に出たため、この筆ペンに落ち着きました。

他の筆ペン愛用者にもこの筆ペンをおすすめしたところ凄く書きやすいと好評でした。
是非使用してみてくださいね。

書道家の考える美文字とは。おすすめの美文字練習法を紹介!

に関しては、実用書道に使用されるものは腰のある硬めの筆をおすすめします。
近くにあるホームセンターや書店で買おうとせず、専門店でちゃんとしたメーカーのものを、店員さんに相談した上で書くのがおすすめです。

小筆でも求めていくと2000円弱のお買い物にはなるかもしれませんが、ちゃんとしたものは筆先が安定しており、頻繁にバサバサになる筆を直さなくても良くなるので極めて実用的かつ、美文字を書くためにも集中して書けるようになることでしょう。

書道家の先生は道具にこだわりを持っていらっしゃる方がほとんどです。それは書いているうちに違いが分かってくるから、自然と道具にこだわりを持つようになるものだからです。

書道家にならずとも、それぞれの対象物にあった道具というものは存在するはずなので、色々試してみることをお勧めします。

 

 

「美文字とは何なのか」を考えることが、本物の美文字を手に入れるための道筋をつくる

 

今回の記事では書道家藤井碧峰の独自の目線より、美文字についての意見や提案をさせて頂きました。

書道に関しても美文字に関してもそうですし、他の芸術、デザイン業界においても同じことがいえることですが、結局はその人の持つ感性によって辿り着くところは大きく変わってきます。

まずはどういうものに惹かれるのか、多くのものに触れたうえで自分の中で取捨選択した上で納得出来たら、その目指すところに進むのが最善と言えるかもしれません。

書道家の作品購入・制作依頼と価格の疑問、作品を見るには?

ただ言えることは、美文字を手に入れたいと考えた時に、美文字というのは書道という大きく奥深い世界の中の一つでしかないということです。

美文字だけ手に入れようとしても感性は磨かれるものではなく、より多くのものに触れた中で、「これは美しい」だとか「これは美しくないけど魅力的だ」だという判断ができるものなのです。

つまりは世間で美文字だと謳っているものの多くは、自分や身の回りの身近な人が認めたというだけの美しさなのかもしれません。

それをより多くの人が認めるような、いや、
”認めざるを得ないような本当の美しさ=本物の美文字”
を手に入れるために一度原点に返って考えて、この記事があなただけの本物の美文字を手に入れてく道筋となったなら幸いです。

 

 

 

この記事の著者

藤井碧峰

1990年2月富山県砺波市生まれ。平成生まれの若手書道家として、古典臨書に基づく正統派の書が持つ本物の字の良さを追求しながら、現代的で、誰よりも敷居の低い、身近な書道家を目指して活動しております。第七回比田井天来・小琴顕彰佐久全国臨書展 天来賞受賞。令和元年、日本三霊山 立山山頂 雄山神社峰本社に看板奉納。

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