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BLOG 書道・筆文字 【書の三人展】|中野公民館まつり

【職人魂】展示・見せ方に徹底的にこだわる|「書の三人展」にて

絶対に手抜きを許さないことが職人魂

11月に行った中野公民館まつり「書の三人展」に触れるのも今回が最終回です。
世界一の公民館まつり特別展示にするため、展示の仕方に情熱を注ぎこみました。
絶対に手抜きを許さないことが職人魂だと思っていますが、まさしく職人魂で徹底的にこだわってその会場を作り上げました。

【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

会場にお越しいただいた方々からよく頂いたお言葉として、「会場の雰囲気が良い」という意見がありました。
通常の展示では画材屋さんによくある緑色の長い紙を壁紙に使うのですが、今回はそれは一部のみで使用。
何故かというと、丸まった状態で来る関係で、この部屋の特性上、紙の下部を固定できず浮いて落ち着かない。

【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

そこで左右の紙を裏面で貼り合わせたりして押さえて対処し、更に当日は手前に机を設置し参考書籍を置いたため目立ちませんでした。

【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

さて、メインとなる大きな作品展示コーナーでは、沢山色の設定のある模造紙サイズの画用紙を2枚つないで壁紙にすることにしました。
今回は”先生方がよりご立派に見えるように”藍色の画用紙を使用

2枚つなぎの画用紙の良さは、
・求める雰囲気に合わせて色を選べる
・大きさが2182x788mmとなり、緑色の紙(約1900x1000mm)より横幅は狭いが縦長に使える。
より部屋の見せたくないところを隠し、会場の雰囲気を作り出せる
・折り畳めるため、使い方次第では再利用しやすい。収納しやすい。
といった点です。

それを和室の壁の木の部分に3本ずつピンで刺していきました。(それなりに重さがあるため、破れないようにしました)

【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて
【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて

・・・と、作業内容を書くのは簡単ですが、実際には隙間ができてやり直したり、ピンを押したり引っ張ったりするのに指が痛くて大変でした。
そしてそれを何時間も一人で作業しています。
大変疲れる作業なのでワーキンググローブと工具を使うことを推奨します。

ちなみにこれは今回だから許されたことでして、実は今年(2024年)この建物を改装する予定だったので、壁に穴を開けたい放題にすることが許され、フックでも何でも付けられました。
とことんトンカチで叩きまくりました。
そのおかげでいたって普通の和室が・・・

【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて
【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて

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【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市
水上碧雲先生公民館まつり特別展示|富山|書道

こんなに重厚感がある部屋になります。
藍色の画用紙2枚つなぎだと下までビシッとしているので、結構多くの方が布で遮っているように見えたとのことです。
隣り合う画用紙つなぎ目も特に気にならなかったようで(そういう作品配置をしているが)、色合いも結構重要だったはずです。
この小さな部屋に対して6時間以上掛けて、異常なくらい細かく丁寧にセッティングしていった甲斐がありましたが、これも複数人でやっていたら余程細かい人間と組まない限り無理かなと思われます。

壁紙について触れましたが、一方で元々の和室の雰囲気を利用した箇所もございます
小作品コーナーは壁の色合いも程よく使えると思い、ピンを入れてそのまま飾りました。
何せお気軽に飾れる書作品としての存在ですからね。

【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて

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【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

ここでは壁紙による雰囲気づくりをするのではなく、作品の表装の統一感によって雰囲気を作りました
既に額装してあった色紙作品もあったのですが、全て取り出して自分の所有品である色紙掛けを利用して軸装作品として展示しました。
色紙掛けのみならず色紙額も多数ありまして、自分以外の人のために使えるほど所有しているというのも、年に何回も作品展示をしている本業書家ならではでした。
(期間中に別の場所で金沢教室の展示も行っていました)

飯田乕山先生揮毫作品|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山|書道
水上碧雲先生公民館まつり特別展示|富山|書道
藤井一南先生揮毫作品|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山|書道

一部作品を除き、そうして色紙掛けを使用しましたが、それも縦の長さが違ったり雰囲気が違っていたため、作品に合うor合わないであったり、他の先生方とのバランスを取ることにも注力しました。
ただしこればかりはセンスなので、今は良かったと思うほかありません。

小作品コーナーはもちろんですが、他においても既にある環境をフルに使うことを大切に考え、何度も部屋を見てはメジャーで寸法を見て、構想を練っていきました。
使える範囲は限られますし、そのなかでどれだけの情報量を詰め込むか、どれだけ分かりやすく見せられるか等、課題は沢山ありました。

【職人魂】展示・見せ方への徹底的なこだわり|「書の三人展」にて

この横長の額は展示場所確保のために外し、その箇所を使って有効活用しました。
横長の額や大型の額の場合、壁側に飾るとフック&壁の強度不足等の問題が生じるため、作品選別中から個数制限するなど気をつけてきました。
表側には飯田乕山先生の額を展示し、反対側にも上田桑鳩先生の額を展示。

飯田乕山先生揮毫作品|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山|書道
上田桑鳩先生書状|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

あとは作品の傾きを無くすことは当然ですが、作品同士の高さの位置を全体で調整することも一切妥協せずやりました
割と世間の作品展示しているところでは、この辺がちゃんとしていないなと感じています。
それ一つで結構作品の見え方が変わってしまうんですよね。
見る側からしたら傾きとかが気になって、内容入ってこないことがあったりします。

ただこれが結構難しいです。
私も銀行の作品展示で、会期が始まってから手直ししたこともあります。
それに気づけることと、直さないと気が済まない性格が大切です。

飯田乕山先生揮毫作品|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山|書道

などなど、展示・見せ方へ徹底的なこだわりを持って挑みました。
潔癖症の極みのような作業内容だったような気もしますが、現地を訪れた方には今の自分の集大成と言えるものをお見せできたかなと思います。
どうしても場所的に美術館等と違い雰囲気で及ばないものがありますから、それを展示場所として魅力的になるように構築したのが今回の展示でした。

一人の職人、仕事人として最大限にパフォーマンスを引き出す

「書の三人展」の展示における各手法については先述の通りです。
では何故それをできたかを検証しましょう。
大体の人は手法とか技しか興味がないのが常ですが、想いや基礎となるものが無いと残念ながら成立しません

【書の三人展】題字揮毫|中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

本展示は企画人の藤井碧峰自らが本業書家として生きている身でありながら、ずっと住んできた地元地域でご活躍された3名、飯田乕山先生、藤井一南先生、水上碧雲先生を取り上げるという内容でした。
先人が残していった書文化があったからこそ今自分が活動できるのであって、そこには感謝の想いもありながら、良いものがあるにも関わらず知られず失われていくことへの危機感もありました。

展示のために沢山の取材、資料の収集・分析を行っていくうえで、敬意を持って接することでより多くの学びを得られ、何よりも先生方の良さを知ることができました。
敬意を持つことができたのは、地元地域という設定だったからというのはシンプルながら大きな理由です。

審美眼について考える

しかし、自分は起業5年の身でありまして、世間一般には本来自分を売りたいであろうタイミングで、自費を投じながら多くの時間と労力を使い、身体的にも限界を感じながら挑戦しました。
それでもこの機会を通してお世話になった水上碧雲先生への感謝の想いを伝えなければ、ずっとモヤモヤしながら仕事をしなければいけないことは明らかでした。

「書の三人展」企画は、実は業界的な悩みを消化する手段でもありました。
それは『誰に師事しているんですか?』という問いに対する虚しさです。
書の世界にいるとその質問が度々あって、「(砺波or富山の)水上碧雲先生です」と答えても分かってもらえない。
表に出ることの無かった先生なだけに仕方がありません。
(※これは地方や地域の先生にありがちなことなので、水上先生のことだけを言っているのではありません。)

水上碧雲先生揮毫石標|【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山|書道

今という時代はデジタル。
パソコン、スマートフォン、ホームページ、SNSと、何でもツールがある中で、今自分にできることがあるとしたら、水上碧雲先生という自分にとって特別で大切な存在を、ちゃんと記録として残し、その活動を同じ書き手として検証することです。
今回それを実施したことで、これからは作品画像をお見せしたり、記事をお見せして堂々と紹介できます。
私の教室の生徒さんの今後にも役立つことがあるかもしれません。

最終的には、飯田乕山先生と藤井一南先生の書業についても記録させていただけることになりました。
気持ちのうえでかなり燃えました。
各先生方に習っていた方々も、その活動時期の関係もあり既にご高齢になられているかたが多数いらっしゃって、この会場を訪れるのも大きな出来事となるかもしれない。
改めてご自身が師事された先生方の書業に触れて、理解することで、大きな満足感を得られるのではという仮説を立てていました。

【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

北日本新聞さんにもご協力いただき、記事をご覧になった沢山の方々にお越しいただき、やはり予想していたようなかつて師事されていた方も多数いらっしゃいました。
そしてご親族の方々。この展示を行ったことに本当に感謝されて、私は本当に幸せでした。
何度も同じように記しますが、それだけ感動的な出来事でした。

万が一ここに訪れることが出来なかった場合にも、このホームページは小さな作品展会場、もしくは作品集・解説書として成立します
これがどこまで機能するかは分かりませんが、多少なり記事をご覧になった方の参考になれば、世の中の作品展示の場や、師事された先生方への感謝の伝え方が良い意味で変わっていくのではないかと思います。
それは私にとっての大きな喜びです。

【書の三人展】中野公民館まつり特別展示|富山県砺波市

あとは最後に書き残しておきたいことが一つ。
今回の【書の三人展】で超活躍したのが我が家の祖母。
3名の先生方の作品をお借りするにあたって、各家庭の方々と繋いでいただいたのでした。

公民館まつりのためとは言え、いきなり33歳の訳のわからん奴が来て作品をお借りするにも不安に思われるかもしれないところで、祖母の友好関係が非常に活きて、一緒に動いて皆さまと親しくなりながら前進しました。
祖母もコロナ禍の影響で会えなかった方々に久しぶりに会えて嬉しかったようで、これこそ地域を結イベント公民館まつりです。
昔のこともさり気なく話を引き出せるという点で、非常に心強かったですね。

その点で言えば、この藤井家に生まれたことも、この中野に生まれたことも、水上先生に運良く4歳から習えたことも、何もかもが運命的な出来事だったことのように思えました。
祖母の人柄があっての今回の展示だったのです。
だから今回の展示は祖母と孫の努力の結晶と言えるものでした。

審美眼について考える

「書の三人展」は、
・地元地域に対する歴史的な理解
・日本の書の歴史に対する理解
・俯瞰的な書への理解
・作品展示の技法、展示用備品の保有
・記事、パンフレット等の文章作成能力
・調査のための大量の書籍、資料の保有
・自分(家族)と各先生方の作品を保有する各家庭との関係性
・公民館、文化協会の協力体制
・(何よりも)先生方への強い想い
など、自分のリソースを精一杯活用した企画でした。
一人の職人、仕事人として最大限にパフォーマンスを引き出しました。

こんなに面白い企画もなかなかできないと思いますが、いつかまた違った機会に挑戦してみたいと思います。
他の【書の三人展】のまとめ記事ついてはこちらのページよりご確認ください。

「【書の三人展】|中野公民館まつり」

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