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書道教室における生徒の忘れ物対策事例

忘れ物に対する対処方法を真剣に考える

少し前にInstagramのほうで話題にしていたことですが、書道教室における生徒の忘れ物対策について触れます。

書道道具

藤井碧峰書道教室では忘れ物をした生徒用に、いつも予備の道具を持ってきているんですが、墨池、筆などを貸すと使った状態で返ってきて、とても疲れているのに家で代わりに嫌々(笑)洗っていました。他人のミスで時間を無駄に取られて、正直何をしているのか分からなくなっており、それをどうすれば良いのか長い間考えておりました。 

教室を行っている施設では道具を洗えないし、水曜日の金沢教室の後に金曜日の砺波教室なので、”洗って返して”というルールも成立しません。
そこで他の先生方の教室では忘れ物についてどうされているか聞いたうえで、仕組みとして忘れ物を無くせることを大前提として、どんなやり方が良いのか意見を求め、対策を実施しました。

仮説① 忘れ物は当然あるものとして受け入れ、口では言うけど道具を貸し続けた場合

厳しいかもしれませんが、何かミスを犯した人に対して優しくすること自体、あまり意味が無いと言えます。
これまで私は道具をサッと貸し出ししていましたが、忘れ物をする人は何回もする傾向にあるため、人のためになっていないなと感じました。


お月謝代を頂いているので、そのサービス?の中に道具貸しも含まれるという考え方もあるようですが、その場合忘れ物をせずにやっている人達に対しての言い訳が成立しないような気がします。
むしろ忘れ物をした人が得しているという状態になっていますからね。
駄目なものは駄目と伝えることは昔から大切ですが、最近はそれすらできていない雰囲気が世間にあります。

もし言葉で伝えても直らない場合は、それを防止する仕組みで乗り切りたいです。
個人的には忘れ物に対する罪悪感を持ってもらえることが大切のかなと思っております。

仮説② レンタル代を取る仕組みを作った場合

以前は忘れ物をしても何も失うリスクが無かったため、忘れ物をした引き換えとなる抑止力として一定の効果は見込めます。例えば墨池(墨入れ)を忘れたとして、それを5回くらい忘れたら新品の墨池を買うのと変わりないですから、意識は高まります。

ただし、例えばレンタル代を100円頂く仕組みにしたとしても、単発の100円に改善へ繋がる効果があるのかという問題と、子供が忘れた場合に親が代金を支払って、その人は反省するのかどうか。
ミスを犯した側(本人)の罪悪感を得られないことには、自分(藤井)の気分を和らげるためだけの処置になってしまうというリスクがあります

仮説③ 毎回忘れ物を取りに帰らせるようにした場合

家に取りに帰る時間がもったいないですが、根本的に忘れた人が悪いという問題ではあるので、手間がかかるほど、面倒なほど反省しやすいと言えます
ただし一番の問題として、子供が学校の書写の授業で使って忘れた場合に、学校に入れないという点が挙げられるため、一概にレンタルをしないという仕組みにできません

仮説④ 全て道具貸出制の書道教室にした場合

藤井碧峰書道教室では絶対あり得ない設定ですが、念のため触れてみます。

最近時々見受けられるこのスタイルは、お月謝代を少し高めに設定している傾向があると思いますが、筆や墨池等の手入れも全て教室運営者側で行うというものです。
書道というものは道具ありきの道楽だと思っておりますが、これでは道具に対する愛着が湧きませんし、ちゃんと手入れしなければどうなるかということが理解できない人が育ちます。
これを口で説明しても分かるものではなく、何度も道具の手入れを体験して、時々道具を駄目にしてお金も使いながら学ぶことが大切です

書道家が筆の洗い方、直し方をメーカーの知恵も借りて全力で考える

貸し出しシステムはワークショップのような形なら良いとは思いますが、習字教室・書道教室のようにお月謝代を受け渡しする形で習うのなら、指導者側も生徒側もそれぞれの立場を踏まえたやり方を求めるべき、というのが藤井碧峰の意見です。
このやり方では指導者が雑用係になっているように見えるというところがあり、それが子供たちから見た時にどうなのか、それで良い師弟関係気づけるのだろうかという疑問も

生徒から見て楽なのは理想かもしれませんが、我々職人の世界からすると面倒なところに差が出るというのは当然のことなので、そういった精神修行(修行って言わない方が良いのか笑)も含めて書道教室に行く意味があると捉えたいです。

ただしこれは字に関しても、やり方にしても、ちゃんと意味を持った書道教室をしたい者としての意見ですので、感じ方は各自お任せします。

藤井碧峰書道教室での忘れ物対策内容

① 絶対に譲れないもの、忘れ物とは何か、を再確認

書道教室は字を書くため、習うために来る場所
これは書道教室をするうえで当たり前にしたいところで、遊びに、喋りにくる場所でもないし、他の人のその権利を奪うこともあり得てはいけません。

その上で、藤井育ての親である水上碧雲先生の言葉を引用すると、
『道具を持ってこないのは、“戦場に武器を持って行かないのと同じ”』
ということで、それを生徒さんに紙を配布し口頭で伝えました。

「第一義」書道家 藤井碧峰作品集

② 忘れたら取りに帰る(優先策)

自分で犯したミスを自分で取り返せられる方法が忘れたら取りに帰るです。
この場合、自分なり家族なりの手間がかかることになり、その嫌な思いが罪悪感となり抑止力に繋がります

③ 忘れたらその日はその道具を使うものに手を付けない

筆を忘れたら毛筆課題を諦めて、硬筆(ペン字)の課題だけやる、またはその逆です。
その日練習できなかったことはその人の機会損失であり、自分が忘れたのが悪いのだからと、学べなかったことに対する残念な想いを確かに感じ取ることが大切です。

仮に子供が習っていたとしても、忘れ物をした場合に教室に行ってから気づいて叱っていてもどうしようもなく、家を出る前にチェックする等の仕組みが大切です。
子供の機会損失は、親にとってはお月謝代を無駄にしたことに等しいです。

④ 忘れたらお金を払って借りる。筆、墨液の場合は買うことも検討(妥協案)

<レンタル代>筆は200円、他は100円での貸し出し。
墨池はティッシュとウェットティッシュを用いて、出来る限り綺麗にふき取って返却。
紙は周りの人に新品の袋ごと借りて、新品の袋で返す。

筆は洗うのに時間も掛かるし、消耗品であることなどを考慮して200円としました。
貸すとしても最高の状態の筆を貸すのではなくて少しお疲れの筆を貸し、すぐ帰ってこなくても良いようにし、ちゃんと洗って返させるという流れです。

自分がいつも教室用に新品の太筆や墨液を持って行っているからこそできることですが、忘れ物をした時に新品の太筆、墨液を買い取ってもらうことも検討してもらいます。
そんなに高い道具ではないけど、やはり金額次第で心の動きは変わりますからね。

【人のためにならないことはしてはいけない】

教室は言ってみれば自分の村なので、村長としてやるべきことをやるだけのことです。
生徒さんにはせっかく藤井碧峰書道教室という場所を選んで来ていただいているからには、史上最強の理想郷を創り上げようと思って、教室を始めた頃からずっと試行錯誤を繰り返してきました。

一番大切にしていることは【人のためにならないことはしてはいけない】ということです。
ある意味では、人のためになっていないと思えば、ちゃんと言う勇気を持てるということでもあります。
これは会社員時代から貫いてきたことで、きっと死ぬまで貫くんだとうなと思います。

たかが忘れ物ですが、その対応一つで大切な生徒さんの何かが変わるかもしれない。
そう考えると、本気で対応するのは当然のことです。

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