比田井天来・門流の書に学ぶ「良い書とは何か」|in長野
良い書とは何か?書の良さを知っていただくには?
自分の書というものは、自分では解読しきれないものでもありますが、我々の書の源流であったり、格調高い書、心を揺さぶるような良い景色や良いものを見て、聴いて、感じて、その感覚的なものを書に落とし込むのが僕の仕事のように感じています。
そこで「藤井の良いと思う書は何か」と時々聞かれるので、それに対して学んでいる書の世界の一部をお見せいたします。
藤井碧峰秘蔵?の写真の数々を公開しつつ、良い書とは何か、書の良さを知っていただくにはどうすればいいのか、と考えさせられるような、長野で見た比田井天来先生や・門流の先生方の書を紹介します。
長野で見ることができる比田井天来・門流の書
未だに全ては回ることができていませんが、長野県内の大体の天来先生の書碑は回ることができました。
掲載している写真は字の細かいところまで見えないかもしれませんが、良き書碑が沢山あることを知っていただければ嬉しいです。
石碑巡りにも段々と嗅覚がついてきます。
看板に関しては沢山あり過ぎるので一部取り上げました。
実際の書をもっと見たい場合は是非現地にてご覧ください。
やはり現地でしか感じないものがあって、それが理由で僕も現地に行ってしまいます。
【浅岡先生頌徳碑】|比田井天来|長野市・信州大学教育学部

堂々たる張猛龍風の楷書碑。教育学部の正面入って右手にありますが、車を入れることができないので、近くのパーキングに停めるのが良いです。
【正木先生碑】|田代秋鶴|長野市・信州大学教育学部

天来先生の「浅岡先生頌徳碑」を見に行ったところ、偶然隣の「田代其次書」と記された石碑を見つけ、調べたところ田代秋鶴先生でした。
我が師の水上碧雲先生の師である、中田大雪先生が師事されていた先生でもあります。
【佐藤先生頌徳碑】|比田井天来|長野市・信濃教育会館


木簡隷による書碑。
こちらの碑と浅岡先生頌徳碑、正木先生碑は近いので一気に見に行けました。
なお善光寺からも近いのでおすすめです。
【聖徳皇太子石標】|比田井天来|佐久市・望月

一気に佐久市望月へ移動し、望月宿へ入る橋の手前左側にある隷書の碑です。
【大伴神社社標】|比田井天来|佐久市・望月

褚遂良の孟法師碑のような楷書の碑です。
【菅公社社標】|比田井天来|佐久市・望月


表側は篆書で、裏側は隷書体で書かれています。
【宝国寺寺標】|比田井天来|佐久市・望月


【筆塚】|比田井天来|佐久市・望月

【宝国寺門標】|金子卓義|佐久市・望月


宝国寺にて慰霊之碑を探している最中に見つけたもの。
後々調べてみると金子卓義先生の書で驚きました。
【慰霊之碑】|比田井天来|佐久市・望月


宝国寺本堂の門の前にある道(未舗装)を左側(気分としては左手前側)に行き、少し行くと右手に現れます。
地味に場所を見つけるのに苦労しましたが、天来先生揮毫の宝国寺寺標の位置から宝国寺を見て、左側に見える山の中にあるという感じです。
とても大きな碑で、「慰」の字はその筆力を感じざるを得ないほどの、迫力の大きさです。
裏側の行書は遅速の変化と共に雅味があり、何度見ていても素晴らしく飽きの来ないものです。
金子卓義揮毫看板|佐久市・望月


石飛博光揮毫看板|佐久市・望月





望月宿には沢山の書の木製看板があり、著名な先生方の看板が掲げられているのですが、天来記念館等に散策マップがあり、どこに誰の看板があるか記載されているので便利です。
ただし、なかなかの移動距離なので、僕が最初行った時は折り畳み自転車で行ってきました。
【比田井天来先生生誕之地】|桑原翠邦|佐久市・望月

天来先生の生家前にある書碑です。
裏山を昇ると天来自然公園があり、天来・小琴と高弟の碑があります。
車で行けそうですが、辞めておいたほうが良いのかなと、車のお腹をこすりそうになった経験者は語ります。
【天来記念館】|比田井南谷|佐久市・望月

【皇太子殿下皇太子妃殿下御来館記念】|桑原翠邦|佐久市・望月

【書学院】|比田井天来|佐久市・望月

【至誠】|比田井天来|佐久市・望月

【特別保護建造物虚空蔵堂|比田井天来|上田市東内】

富山から佐久市に行く時にいつも通っている道、旧三才山トンネル有料道路(現在無料)の先にあるのですが、何気なく通っていた道の近くにこの書碑があったと知りビックリです。
これまた私の好きな雰囲気の隷書の碑です。
良い趣きのある書、たたずまいのある書
一気に紹介させていただきましたが、良い趣きのある書、たたずまいのある書が沢山ありました。
感覚的な話をしているので、分かっていただけない可能性も大きいですが、僕はそのように感じています。
そして雅味があること、堂々とそこに確かにあること。
品があること。
筆勢が感じられて、筆意も感じられること。
良い書の要素を挙げればキリが無いのですが、それは後々感じたことを羅列しているだけのことで、やはり実物を目にすると心惹かれて、見入ってしまうのが良き書であったというのが実のところです。

こちらの辰馬本家酒造株式会社「白鹿」も天来先生の書といわれています。
だいぶアレンジされているので、原型は想像する他ありませんが好きな字です。
僕は日本酒に関わることが多いので、好きな雰囲気のラベルの画像を沢山保管していますが、仮に天来先生が書かれていなかったとしても、このラベルは入っていたと思います。
この人が書くから良い書、というのはあるかもしれませんが、絶対的ではありません。
良い書が多彩に、沢山あったうえで、確かな腕であったと認められるのかなと。
今回の先生方の書の紹介も、良いと感じたから掲載させていただきました。
やはり天来先生の筆力には魅了されますね。
商品・社名ロゴの制作も時々行いますが、先人の良き書と向き合い、自分ならどうするかを問いながら、プロとして正々堂々と戦っていけたら良いなと、この記事を書いていて思いました。
これからも各地で良い書を沢山見たいものです。