【増山城御城印】揮毫|【犬殿プロジェクト】打ち上げ|【保科】彫刻表札
職人として日本の歴史と伝統技術に関わってきた日々
大晦日にこのブログを書いているのですが、今年一年はどういう年だったかと言うと、『歴史が自分に近寄ってきたような気がする』といったようなものでした。
でも実際には自分が歴史に近づいていっているのでしょうが、歴史を学び続けていると知っていることと仕事が結びつくことは、非常にワクワクすることであるということに違いありません。
伝統技術というものもまた、歴史の中での伝統あって存在するものです。
年の後半に生まれた新しい事例や出来事を紹介しつつ、そこが少し伝われば幸いです。
【増山城御城印】揮毫|富山県砺波市

12月20、21日にパシフィコ横浜で開催されていた「お城EXPO2025」で、揮毫した特別版の【増山城御城印】をお取り扱いいただきました。
今は砺波市埋蔵文化財センターにて取り扱われているようですので、増山城に登城された方は是非手に入れてください!

『元来嶮難之地』とは、上杉謙信がこの増山城を評した言葉。(増山之事、元来嶮難之地)
現地には説明看板(QRコード付き)も充実しているので、この山城のつくりの奥深さを味わっていただけると思います。
落差が凄いので、登山のつもりで行かれると良いです。
詳しくはこちら。
夢を叶えた時|【国指定史跡 増山城跡】看板揮毫|富山県砺波市

字に関しては、多くの御城印が行書で書かれるなか、唯一無二の雰囲気を持つ御城印となるべく、また増山城跡の広大な雰囲気や今の砺波市の平和な雰囲気も表すイメージで仕上げました。
なお、増山城に関連して「国指定史跡 増山城跡」看板は二の丸にあります。
こちらの看板も手掛けさせていただいて、もう少しで2年になりますが、Googleマップ等で登城された方が沢山この写真を投稿されているのを知り、大変嬉しくなりました。

砺波に増山城という名城あり。
これをもっと多くの方々に知っていただくきっかけになれば幸いです。
大阪の屋形船での【犬殿プロジェクト】打ち上げ

10月の1週目の話ですが、文化財構造計画さんにお誘いいただいて、犬殿プロジェクトの打ち上げに参加するべく大阪に行ってきました。
犬殿が完成したのは3年半前で、題字揮毫したのは4年前でしょうか。


犬殿は犬小屋に日本の伝統建築技術の新たな表現を試みた作品です。
発表当時のブログはこちら。
犬殿(いぬどの)の扁額を揮毫 | 文化財構造計画様


その時の犬殿は現在は銅の犬殿として存在し、大阪万博の際には新しく作られた金の犬殿が展示されました。
9月には京都の仁和寺で犬殿が、扁額を【猫殿】と掛けかえられて展示されました。

日本の伝統技術を結集した犬小屋で、そこには建築関係のみならず、運送、写真、動画など、無数の職人と言える人が関わって出来上がっています。
その人たちが、大阪の八軒家浜船着場に集まり、夜の屋形船に揺られて犬殿の打ち上げが行われました。

誰もお会いしたことが無い、田舎者の僕は慣れない大阪ということもあり、一人ソワソワしながら行ったのですが、船内の席ではクリエイター関係者が近くに座り、それぞれの仕事について熱く語る時間が非常に心地良かったです。
元々専門の学校を出たわけでもなく、先生にそんなことを教わることも無いままに、この書道の事業を思い思いにやってきた藤井碧峰ですが、そんななかでも仕事をする上での自分の感覚をお話してみると、「それは非常に大切な感覚で、よく自分で気づかれましたね」と言っていただけたり、そんなやりとりの中に幸せを感じました。

船内では犬殿プロジェクトの企画者である文化財構造計画の冨永社長が、制作に関してスライドを使いながら説明していかれました。
それぞれの分野で結構大変な内容やスケジュール感でお願いしたりしていたことが明らかになり(笑)、非常に面白かったのですが、良い職人の結集している場所だということを思うと、良い職人はお願いする人にもよるけど想いがあれば真剣に向き合ってくれるものなのかなと感じました。
本当に良い、技術力の高い職人の集まりだったが故に、現地に行って尚更このプロジェクトにお声がけいただけた喜びを感じました。
今自分は職人という意識を持って仕事をしていますが、このプロジェクトの存在もあって職人根性は鍛えられてきました。


コロナ禍に始まったこの犬殿プロジェクトは利益目的でなく、日本の伝統建築技術の結集と周知のために生まれたようなものでした。
伝統の中に馴染む書とは何か、具体的な答えはありませんが、文化財構造計画の冨永社長には「字が出来上がってきた時に、これだなと思う字を書いていただけて嬉しかった」と言っていただけて光栄でした。
答えが無いところに答えを出していくことがプロとしての仕事です。
求められた時に最高のパフォーマンスを発揮し続けられるために、頑固だけど柔軟にやっていきたいと思います。
【保科】彫刻表札(浮き彫り)の制作


保科様にご依頼いただいた浮き彫りの彫刻表札は、井波の彫刻士山﨑新介氏に彫っていただきました。
2人で作り上げた表札は、表札と言うよりかは、まるで生き物のようでして、作り手自ら出来上がったものに喜びを感じております。


かつて見ることの無かった景色が、匠の技によって今は見えています。
他者が感激、感動、心を動かすものを作れた時に、工芸作家としての存在意義が高まり、未来が拓けてきます。
果たして自分たちがワクワクする気持ちでその仕事に向き合えているか、明日仕事ができなくなるとしても、今向き合っている仕事をその気持ち、熱量でしていることに後悔は無いか、そういうことを頭の中で考えてしまいます。
特に歴史を愛する人間としては、歴史と言う文脈の中で自分のあるべき姿を問う癖があります。
きっとこういった思考の先に、譲れないもの、やめても良いものが存在して、その正しい選択と正しい努力をした先に、我々工芸作家の未来が拓かれていき、次の世代へと繋がっていくのだと思います。
来年もまた、正しい選択と正しい努力ができるように、更に見たことの無い世界が見えるように、自分なりに頑張ってみます。




